EMCプリコンプライアンスの測定原理

どの製品開発でも、予期していたとおりに動作することを検証するために最初にデバイスをテストする必要があります。すべての電子デバイスは、認定された社内テスト施設で電磁干渉(EMI)コンプライアンステストに合格する必要があります。EMIテストに合格することで、デバイスのEMIエミッションが許容レベルを満たし、適切な規制基準に適合していることが証明されます。

EMIは、電磁環境適合性を表す包括的な条件である「EMC」に分類されます。プリコンプライアンステストを実施する場合は、デバイスから発生する実際の電磁現象、またはイミッションであるEMIをテストすることが必要です。

ラップトップからスマートフォンまでのすべての製品は、認定されたテストハウスでコンプライアンステストに合格する必要があります。デバイスが連邦政府によって義務付けられているコンプライアンステストに合格しない場合、製品を販売することはできません。

コンプライアンステストの最終段階は通常高額になります。製品がコンプライアンステストに合格しなかった場合、設計を修正するだけでなく、製品開発スケジュールにも影響します。これらの遅延は、製造コストと市場に参入する際の製品の能力に影響します。

正式なテストハウス認証の前にデバイスが確実に通過できるように、EMCテストを実行することが重要です。

以下の情報は、ご自分の環境でEMCテストを実施するために知るべきすべての情報の概要です。EMCプリコンプライアンステストとして知られています。さらに詳細な説明については、下記の「推奨の読みもの」セクションの資料を参照してください。

図1：製品開発サイクルにおけるプリコンプライアンステストの重要性

EMCは、電子機器とその電磁環境やその他の機器デバイスとの相互作用です。すべての電子デバイスは電磁界を放射する可能性があり、コンプライアンステストは、電子デバイスが安全なEMIレベルで動作することを確実にするテストの最終段階です。

認定されたテストハウスは、さまざまなEMIテストを実行し、デバイスに適切なレベルのエミッションがあるかどうかを判断します。これらのテストは、エミッション・テストとイミュニティー・テストという2つのカテゴリに分類することができます。これらの各カテゴリ内では、放射性テストと伝導性テストの両方を実行する必要があります。

• 放射性テストは、非物理的媒体を経由して電子デバイスから放出される意図しない電磁エネルギーの特性を測定します。(ケーブルテスト)。
• 伝導性テストは、物理的媒体を経由して電子デバイスから放出される意図しない電磁エネルギーの特性を測定します。(ケーブルテスト)。

図2：放射性エミッションと伝導性エミッションの測定値は、DUTからの、そしてDUTへの、エミッションの特性を表します。

EMI プリコンプライアンスおよびテストの実行方法を理解するには、それに関連する主な用語を理解することが重要です。

このセクションでは、EMI プリコンプライアンス測定で使用される用語を学習します。

用語

• EMC - 電磁環境適合性 - デバイスからの電磁エネルギーの意図しない発生または伝搬の「包括的な用語」。
• EMI – 電磁波障害
• エミッション - 実際の放射現象、またはプリコンプライアンステストで測定されるエミッション。EMI が設計からテストの開始までに適切に考慮されていないと、隣接デバイスとの間に望ましくない干渉が発生する可能性があります。
• 感受性 - 電磁エネルギーにさらされたときに望ましくない応答を引き起こす電子機器の特性。
• 放射性干渉 - 物理的な媒体を通してではなく、ラジオノイズまたは空中の不要な信号に起因する干渉。
• 伝導性干渉 - 直接結合(ケーブルを介して)によりトランスデューサ(レシーバ)に入力された伝導性ノイズまたは不要な信号に起因する干渉。
• CISPR- 電気および電子デバイスの電磁波障害を監督する標準を定めている国際無線障害特別委員会。
• LISN - ラインインピーダンス安定化回路 - LISNはメインの電源をDUTから分離するため、可能な限り信号をクリーンにしておく必要があるため、重要です。
• 電波暗室 - 音や電磁波を吸収し、内面からの反射をすべて減らすように設計された遮音室。
• 放射 - 電磁波の形でのエネルギーのエミッション。
• イミュニティ- 電波妨害を除去できる、レシーバ、その他の機器またはシステムの特性。

プリコンプライアンスは、被試験デバイス(DUT)が最終コンプライアンステストに合格することを保証する、低リスクでコストパフォーマンスの高い方法です。コンプライアンステストを製品開発サイクルが終了するまで待つことは、コストが高額なためリスクがあります。コンプライアンステストのコストには、コンプライアンス・ラボでの時間の確保とコンプライアンスに合格しない場合のDUTの再設計が含まれます。コンプライアンステスト中に費用を節約し、予期しない事態を避けたいのであれば、適切なプリコンプライアンステストが不可欠です。

プリコンプライアンスとコンプライアンステストの主な違いは、以下の画像に示すように、電波暗室の形式とそれを使用することです。

電波暗室は、電磁波の反射を吸収するよう設計された部屋です。予期せぬ干渉がないことを確実にするため、電子デバイスのテストを行うのに最適です。一般的に、コンプライアンステストは規格に従った電波暗室による正規のプロセスを要するが、ほとんどの電子デバイスメーカーの社内にはこのような電波暗室はありません。これらは頻繁にサードパーティのグループを通じて事前に予約されています。これらの電波暗室は、プリコンプライアンステストおよびコンプライアンステストの重要な差別化要因になります。

図3：電波暗室を使用することは、プリコンプライアンステストと最終コンプライアンステストの主な違いです。

エミッションテストは、デバイスからエミットされる電磁エネルギーの量を測定します。デバイスが近くのデバイスと誤って干渉しないようにするために、エミッションテストは重要です。

エミッションテストには、放射性と伝導性という2つのカテゴリがあります。

放射性エミッションテストは、デバイスからのエミッションの空気電磁エネルギー強度を定量化します。デバイスからのこれらのエミッションが適切な標準に準拠していることを確実にします。多くのデバイスがこのタイプの測定で落ちているため、プリコンプライアンス中の放射性エミッションテストに多少の時間を費やしています。

図4：放射性テストに必要な機器には、プリコンプライアンスのソフトウェア、三脚に取り付けられたアンテナ、およびDUTを備えた信号アナライザが含まれています。

以下は放射性エミッションテストに必要な機器です:

• 三脚に取り付けられ、DUTから1〜3メートル離れた位置に設置された校正済みEMIアンテナ
• EMCプリコンプライアンス測定ソフトウェア(キーサイトN6141A EMI測定アプリケーション)を搭載したスペクトラム・アナライザ
• プリアンプ

干渉を避けるため、他の機器から遠く離れて放射性エミッションテストを実施する必要があります。たとえば、大きな駐車場や無人の会議室を使用できます。ブロードキャストラジオ、テレビ、または携帯電話からのトランスミッションは、放射性テストのプロセス中にDUTまたはアンテナと相互作用しないことが重要です。

伝導性RFエミッションは、DUTの電気的活動によって作成された電磁妨害であり、相互接続する電力、信号、またはデータケーブルによってDUTから伝搬します。伝導妨害は、DUTからの結合経路に沿って他の電子デバイスに直接移動します。さらに、伝導妨害はデバイス自体の内部で伝播し、性能に悪影響を与える可能性があります。伝導性エミッションテストは、DUTのAC電流によって生成されるこれらの不要な信号に焦点を当てています。

以下は伝導性RFエミッションテストに必要な機器です:

• EMCプリコンプライアンス測定ソフトウェア(キーサイトN6141A EMI測定アプリケーション)を搭載したスペクトラム・アナライザ
• LISN (電源インピーダンス安定化回路)
• リミッタ

イミュニティーテストは、他のデバイスからエミットされる電磁エネルギーに対してデバイスにどのくらい影響があるかを判断します。

放射性イミュニティーテストでは、周辺環境の他のデバイスからのOTAエミッションに対するデバイスの感受性をテストする必要があります。

以下は放射性イミュニティーテストに必要な機器です:

• 信号発生器(Keysight MXGまたはEXG)
• 近傍界プローブのセット
• 無線

伝導性イミュニティーテストは、他のデバイスからのデバイスとケーブルのEMIへの感受性を評価します。

隣接デバイスからの電磁エミッションによるデバイスの影響を受けないようにするため、イミュニティーテストは重要です。イミュニティーテストは、他のプリコンプライアンステストよりも早くて簡単です。CISPR規格においてイミュニティーテストは必須ではありませんが、弊社は強く推奨します。

図6：伝導性イミュニティーテストに必要な機器には、信号発生器、信号アナライザ、近傍界プローブのセット、およびDUTが含まれます。

EMCテストでは、他の機器の性能に脅威を与えたり低下させるエミッションの放射をせず、デバイスが設計仕様に準拠していることを確認します。EMCテストは、国際無線障害特別委員会(CISPR)のようなEMC規制機関により開発された厳しいエミッション基準を満たす必要があります。CISPR、国際電波障害特別委員会は、放射性EMIを測定するための機器と方法を決定します。さらに、CISPRは、業界や製品を販売する国によって、電子デバイス用に放射性エミッションの求められるレベルを設定します。

DUTを測定する前に、以下の準備に関わる質問について自問自答しておくことは不可欠です。

1. どの国で製品を販売しますか(欧州、アメリカ、アジア太平洋地域、中国)?
2. 製品の分類は何ですか?

• 情報技術機器(ITE)
• 産業、科学、または医療機器(ISM)
• 自動車
• 通信
• 一般/家庭用品
• 製品がどこで販売されるのか(家庭、商業、産業)

これらの質問に対する回答は、製品のEMC規格を決定するのに役立ちます。製品のEMC規格を理解すると、必要なEMCテスト測定を計画することができます。

プリコンプライアンステストの利点

EMCプリコンプライアンステストにより、時間の無駄とコストのかかるやり直しがなくなります。開発プロセス中にEMCプリコンプライアンステストを含めることで、製品が完全なEMCコンプライアンステストに合格する確率を大幅に向上させます。プリコンプライアンステスト・システムを加えることは、製品のEMCコンプライアンスを達成するための最適なアプローチであり、市場投入までの時間を減らし、コストパフォーマンスが高くなります。

図7：すべてのエレクトロニクスは、どのタイプの製品で、どこで販売されるかに応じて特定のエミッション規制に合格する必要があります。

キーサイト・プリコンプライアンス・ソリューション

• キーサイトXシリーズのアナライザは、最先端の信号解析を使用して、設計、テスト、および供給の手助けをします。幅広いリアルタイム分析から低コストの必須測定まで、選択してください。
• N6141A EMI測定アプリケーションは、キーサイトXシリーズの25以上ある測定アプリケーションの標準ライブラリの1つです。このアプリケーションは、Xシリーズ信号アナライザを強力なEMIプリコンプライアンスおよび診断ソリューションに変換し、使用が簡単なデータ収集および解析ツールを提供し、新しい設計の市場投入までの時間を短縮します。

信号アナライザでEMIプリコンプライアンステストを実行する利点は、新製品のEMI性能を適切に予測でき、プロジェクト終了時にEMIコンプライアンスに不合格するリスクを減らせることです。

プリコンプライアンス測定をよりよく理解するために、以下のアプリケーションノートの「放射性および伝導性測定の実行」を参照してください。